人気ブログランキング | 話題のタグを見る

幸田露伴と芥川龍之介とコンポート

 昨日は幸田文さんの父である幸田露伴と菊池寛の親友であった芥川龍之介の本を読み終えました。コンポートの制作もしてますが、この雨の湿気で乾きが遅く、様子を見ながらの制作です。そして今日は朝から冷たい雨が降り寒い一日になりました。で早いですが、セーターを着こんでます。早すぎるかしらん?
幸田露伴と芥川龍之介とコンポート_d0385870_22280686.jpg


 幸田露伴(1867~1947)は、あの樋口一葉女史に一度だけ、それも一時間位会って話をしたそうですが、その印象はこの本より引用させていただくと、
樋口一葉は、どちらかと言えば口数の少ない、弁才流るるが如しなどといふ側では無い、十分思ったことも五分か六分言って黙ってしまうといふやうな人に見えた。然しあれだけの文才がある人であるから、打ち解けて語り交わすという段になったら随分機鋒も鋭利に面白く話すことも有らうが、大体のところは寧ろ思ふことを外に発するよりは自分の肝内に書きつけて置くといふ質の人と見えた。作品について 大抵のものを見ても感服などしたことは無かったが、「たけくらべ」を読んだ時だけは、思はず知らずニコリとさせられた。自分は今でも「たけくらべ」を愛し、そして今日「たけくらべ」を読んで別に面白くもない云う人があっても、明日になり明後日になっては其人が、ああ面白い、といふ時の有ろうことを信じて疑はないものである。と述べられております。一葉の性格は予想はしてましたが、分かりますね。個人的な感覚ですが、ちょっと向田邦子さんの雰囲気を感じます。秘密めいた才女、いいですね。好きです。

 そして露伴が亡くなる時に側にいて看取った娘の幸田文さんは、露伴の終わりの看取りの記「終焉」を残しておられます。文を一部引用させていただきました。

仰臥し、左の手を上にして額に当て、右手は私の裸の右腕にかけ、「いいかい」と云った。つめたい手であった。とくに理解できなくて黙ってゐると、重ねて、「おまえはいいかい」と訊かれた。「はい、よろしうございます」と答へた。あの時から私に父の一部分は移され、整へられてあったやうに思う。うそではなく、よしといふ心はすでにもってゐた。手の平と一緒にうなづいて、「ぢやあおれはもう死んぢやふよ」と何の表情もない、穏やかな目であった。私にも特別な感動も涙も無かった。別れだと知った。「はい」と一言。別れすらが終わったのであった。
 
 そして芥川龍之介(1892~1927)ですが、この本の中の「澄江堂雑記」に
後世 私は知己を百代の後に待とうとしているものではない。時々私は二年の後、或は五十年の後、或は百年の後、私の存在さえ知らない時代が来ると云う事を想像する。その時私の作品集は、堆(うずたか)い埃に埋もれて、神田あたりの古本屋の棚の隅に、空しく読者を待っている事であろう。いや、事によったらどこかの図書館にたった一冊残った儘、無残な紙魚の餌となって、文字さえ読めないように破れ果てているかも知れない。しかしー、私はしかしと思う。
しかし誰かが偶然私の作品集を見つけ出して、その中の短い一篇の中の何行かを読むと云う事がないであろうか。更に虫の好い望みを云えば、その一篇なり何行かなりが、私の知らない未来の読者に多少にもせよ美しい夢を見せるという事がないであろうか。
 私は知己を百代の後に待とうとしているものではない。だから私はこう云う私の想像が如何に私の信ずる所と矛盾しているかも承知している。
けれども私は猶想像する。落莫たる百代の後に当たって、私の作品集を手にすべき一人(いちにん)の読者のある事を。そうしてその読者の心の前へ、朧げなりとも浮かび上がる私の蜃気楼のある事を。

 芥川龍之が自死してから100年近くになりますが、私は芥川龍之介氏に云いたい。大丈夫ですよ。あなたの作品が素晴らしい事は、今の今でも歴然として認められています。そして今後も愛され続けるでしょう。もっともっと生きて沢山の作品を生み出して欲しかった!「地獄変」は今読んでも、素晴らしい作品とおもいます。
 
 そして「追憶」の中にある郵便箱は小さい頃の思い出として記してあります。雀色時っていい言葉ですね。
 
 郵便箱 僕の家の門の側には郵便箱が一つとりつけてあった。母や伯母は日の暮になると、代わる代わる門の側へ行き、この小さな郵便箱の口から往来の人通りを眺めたものである。封建時代らしい女の気持ちは明治三十二三年頃にもまだかすかに残っていたであろう。僕は又こう云う時に「さあ、もう雀色時になったから」と母の云ったのを覚えている。雀色時と云う言葉はその頃の僕のもっとも好きな言葉だった。

 さてコンポートの制作ですが、筒形の高台も作ってみました。どちらかと言うと、この形は普段使いに良いかも知れませんが、ちょい可愛いいになるかもです。
「美しい」へもう一頑張りします。次は黒マット釉薬のコンポート作りです。もう焼く前から、使用する釉薬決まってます。

幸田露伴と芥川龍之介とコンポート_d0385870_22383650.jpg
 そして側面はこんな感じです。
幸田露伴と芥川龍之介とコンポート_d0385870_22385791.jpg



名前
URL
削除用パスワード
by sannkakubashi | 2019-11-23 23:25 | | Comments(0)